二八蕎麦とは、蕎麦粉八割、小麦粉二割という配合の蕎麦のことです。樹庵が創業以来この比率を貫いているのには、単なる伝統以上の深い理由があります。それは、私たちが理想とする「香り・食感・喉ごし」の三要素を、最も高い次元で調和させることができる黄金比だからです。
樹庵の蕎麦の最大の特徴は、異なる二種類の挽き方をブレンドしている点にあります。一つは、蕎麦の殻がついたままの玄そばをあえて荒く挽いたもの。これは蕎麦本来の力強い野生味と、鼻に抜ける芳醇な香りを引き出すために欠かせません。そしてもう一つは、殻を除いたむき身を細かく丁寧に挽いたもの。こちらは蕎麦の繊細な甘みと、滑らかな食感を生み出す役割を担っています。
この二つを合わせることで、噛むほどに風味が広がり、かつツルリと心地よい喉ごしを楽しめる独特の麺が生まれます。しかし、蕎麦粉の割合が高すぎるとボソボソとした食感になりやすく、逆に低すぎれば香りが損なわれてしまいます。私たちが長年の経験から辿り着いたのは、素材の個性を最大限に活かしつつ、つゆとの絡みも絶妙な二八のバランスでした。
毎朝その日に提供する分だけを打ち込む三タテのこだわりも、すべてはこの繊細な黄金比を最高の状態で味わっていただくためです。まずはつゆをつけず、ひと口そのまま手繰ってみてください。職人のこだわりが詰まった二八蕎麦ならではの、深い奥行きを感じていただけることと思います。
